九月、俳人正岡子規が生まれ、そして亡くなった月、九月は別名長月、菊月、紅葉月等と呼ばれ俳句には欠かせない月である。
子規はほととぎすの別名、子規本人が結核で血を吐くが、「鳴いて血を吐くほととぎす」にちなんで自らの雅号とした。
一方、面白いのはスポーツに余り興味を示さなかった彼が野球にはのめり込んだ。並大抵の趣味ではなく選手でもあり、近代野球界へも貢献している。
野球という言葉自体が彼の本名。升(のぼる)すなわち、日本語の野球の語源「野の球(ボール)」からきているのだ。彼は生涯54もの俳号を持つが、その中に盟友の漱石や野球もある。
短い生涯を病の床で過ごしながら、俳句に近代文学としての地位を確立して逝った子規、34歳。
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな 1902年9月19日 子規逝く
糸瓜の水は痰きりに効く。子規の忌を糸瓜忌とも言う。
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―9月の作品抄ですー
青田波夕日の沈むところまで 清裕
新盆や写真の母は笑みあふれ 清裕
銭湯に見知らぬ子らや盆休 清裕
Go To キャンペーン踏み出す一歩虫の声 千恵
指隠すその親もなき秋の風 千恵
かなかなと聞こえて足を速めけり 千恵
秋祭母の形見の青海波 美幸
夜も昼も金魚を守り布袋草 美幸
薄衣記念写真も庭先で 美幸
中々に動かぬ箏柱秋ついり 淳子
金柑の枝もたわわに色づきぬ 淳子
稲妻や雲従へて近づきぬ 淳子
朝とりと記すオクラのやや高値 敬子
手にあまる国産林檎のこのサイズ 敬子
さりげなく眺める空や処暑の月 敬子
唐黍や崩れし姿ポップコーン かずみ
タイマーに任せ無花果煮る夜かな かずみ
小遣を首にぶらさげ秋祭 かずみ
夜学生昼間の疲れ今しばし イサ子
林檎園りんご列車はのろのろと イサ子
星飛べり一つはUFOなるや イサ子
カレンダーうめられぬまま夜半の秋 美和子
椋鳥の空一面のアートかな 美和子
カーテンを洩れし月光夢やぶる 美和子
ミニチュアも音鳴るやうや鹿威し 由美
コロナ禍に待ちし成田の残暑かな 由美
猛台風我が郷を飲む輪を持ちて 由美
朝霧に消ゆるルアーの放物線 モトコ
しりとりを時計回りに秋うらら モトコ
古き映画の未来が過去になる夜長 モトコ
炎天に下校の子らの声響く 百々代
鰯食ふ回転寿司の皿重ね 百々代
秋風や同じこと反故隣り人 百々代
ひたすらに風待つコスモス波となる 一広
木の実降るひとつがあれば子の遊ぶ 一広
芒原道なきならば歩きたし 一広
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