俳句に関わる者にとって9月という月は忘れられない。近代俳句を再生した正岡子規の誕生月であり、又亡くなった月でもあるからだ。
子規は言葉遊びの俳諧を陳腐と否定し芭蕉の詩情を高く評価した。和歌も辞麗句の言葉に走る「古今集」を否定し「万葉集」を高く評価した。写実である。
34歳と言う短い生涯で子規が成し得た文学への貢献は大きいが、素晴らしいのは、子規の生き様の見事さであった。
後年、病に臥しつつ「病牀六尺」を書くが、少しの感傷も暗い影もない。野球の好きな子規は明治の野球界に貢献、平成14年に野球殿堂入りを果している。
野球と言う言葉は子規の幼名の升(のぼる)を「野ボール」と読ませたものだ。
実際、子規は「野球」を俳号にも使った時期がある。病をも客観的に見てしまう。明治の俳人、時世の句も又すばらしい。 一広
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな 子規
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9月の作品抄です
関は処暑白河超える優勝旗 清裕
鯊日和満ち潮狙ふ釣り上手 清裕
永代の供養を思案墓参 清裕
虫の声のみを残して夜も更けぬ 千恵
夕暮れや刈ったばかりの草の香 千恵
小さき手で数えてみたき鰯雲 千恵
豚汁の豆腐は大切り夫好み 美幸
三ツ矢サイダー父の遺影の花に添ふ 美幸
露の世の雲間を抜けて空の父 美幸
化粧箱みっしり詰まる路地蒲萄 敬子
故郷の梨なつかしき薄緑 敬子
秋夕焼けふの溜息天に投ぐ 敬子
手を止めて写真整理の夜長かな 美和子
降り立った異国の空に鰯雲 美和子
美酒に酔ひ月に酔うてか千鳥足 美和子
抽斗に秋物探す朝目覚め 澄江
己が影踏む名月や風呂帰り 澄江
ふと襲ふ寂寥感や秋の暮 澄江
富士見たさだけの急坂この残暑 一広
それぞれの誓ひを胸に草の絮 一広
廃村の跡は雲行く大花野 一広
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鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com