10月の声を聞くと、私の住むメキシコ北部にも秋の気配が訪れます。朝夕は風が涼しくなり、花々には秋の蝶が舞い始めます。色様々な蝶の中でも、目を引くのがモナルカ蝶と呼ばれるオオカバマダラです。
モナルカ蝶は、秋になると越冬するために、カナダ南東部やアメリカ北東部からメキシコのミチョアカン州までの4500キロメートルに及ぶ南下大移動をします。
渡り鳥ならぬ渡り蝶です。黒で縁取られたオレンジの鮮やかな蝶の個体が大集団を作り飛んで行く様は、自然の素晴らしさとその強さを私たちに教えてくれます。
一度、我が家の裏山から滝のようにモナルカ蝶が流あります。今年もいよいよ頃合いです。
秋風と共にその到来が待たれます。 千恵
気持ちよく風に乗りくる秋の蝶 野口香葉
10月の作品抄ですー
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コスモスの茎たくましく老いるなり 清裕
秋没日お先にと友旅立ちぬ 清裕
渋柿と知るや知らずや実り待つ 清裕
幼手と大きさ比ぶもみぢかな 千恵
モナルカ蝶風のままなれ遥か飛べ 千恵
十三夜子を楽します片見月 千恵
色褪せしアルバムめくり秋の暮 美幸
新蕎麦の香りに惹かれ越す峠 美幸
コスモスに添える指先もどかしく 美幸
母の手の細き力や秋の蝶 淳子
旅立ちの母を見送る秋桜 淳子
美しきかな花野の中を母の顔 淳子
新米の届きお礼の長電話 敬子
西日受く身の丈超える草小積み 敬子
着流しのするりと流す走り蕎麦 敬子
壇上の懸崖菊や演者待つ かずみ
旅宿の簪めける花すすき かずみ
新蕎麦の幟つらねて深大寺 かずみ
コスモスの写真撮る子を隠す風 イサ子
トタン屋根木の実の雨で過ごす夜 イサ子
退院日踏む足軽く秋時雨 イサ子
夕映えや我の上行く雁の列 美和子
風の中香気の混じる花野かな 美和子
また明日と父に残して秋の暮 美和子
秋澄んでゆっくり伸ばすアキレス腱 モトコ
陽の赤の染み込んでゆく薄紅葉 モトコ
パノラマの秋天環状交差点 モトコ
萩の庭抹茶に憩う美浜園 桜子
竹籠に活けしコスモス和の極み 桜子
ベランダに咲いて名はキバナコスモス 桜子
コスモスや風にも負けぬしたたかさ 澄江
流れ星両手を広げ待つ子をり 澄江
京の旅朱の服しのぐ紅葉寺 澄江
夕さりの雲の高さに雁の棹 一広
騙し絵にだまされ歩く良夜かな 一広
新涼や腹に一物なき土偶 一広