季節の流れは速い、もう11月、その月々の暦を返りみるのも楽しい。冬を前にした静かな季節ですが、日本の11月は賑やかで希望に満ちた出来事に溢れています。
明治の日本はいち早く太陽暦を取り入れています。華やかな鹿鳴館開館も、歌舞伎座も日本初の私鉄設立や幼稚園のはじまり。そして戦後わずか4年にして湯川博士が日本初のノーベル賞を受賞したのも11月。
文学では日本ペンクラブ創立、当用漢字発表、明治13年に文部省はピアノ11台購入と11月の日本は近代化に向けて輝かしく突き進んできた歴史の月なのです。
我々も俳句でこの美しい秋から冬への季節を詠い続けましょう。
野ざらしを心に風のしむ身かな 芭蕉
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―11月の作品抄ー
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夕暮れの棚田縁取る曼珠沙華 清裕
長き夜に為すことも無し手術終へ 清裕
なにやかやいろいろあって鰯雲 清裕
自転車の子ら追ふ落葉のつむじ風 千恵
ポインセチア時待ち今と染め始む 千恵
公園の人もまばらに冬はじめ 千恵
夕暮れて益々濃しや照紅葉 美幸
秋深し日にちが薬よとなだめ 美幸
小春日や笑みも広がるテラス席 美幸
縁ありて契りの集ひ神無月 淳子
山の端を影絵としたる冬茜 淳子
庭の椅子猫伸びきって日向ぼこ 淳子
前撮りを重ね重ねて七五三 敬子
一文字のぐるぐる阻むこのぬめり 敬子
延期せし婚礼の日の小春かな 敬子
犬神家に会ふやも知れぬ霧の湖 かずみ
暖房の微かな匂ひ朝ぼらけ かずみ
木枯や今夜は鍋よとLINEする かずみ
犬連れて午後の散歩や冬温し イサ子
引き出しの全てを開けて冬支度 イサ子
老いたるか洗髪後を風邪の神 イサ子
また一輪裏でひっそり帰り花 美和子
コロナ禍の顔半分の色マスク 美和子
冬の月犬の小さき影を追い 美和子
遺言書の原本探す冬支度 由美
友の蕎麦真っ赤に染まる唐辛子 由美
4kのコスモス母の見惚れおり 由美
団栗とソックス洗濯槽の底 モトコ
保温用弁当箱買ふ鵙日和 モトコ
スタンプの増えぬ旅券や初時雨 モトコ
信玄の防具の備へ秋の川 百々代
大樹二本僧黙々と銀杏を 百々代
秋の日に姉妹の旅や卑弥呼塚 百々代
坂の街歩けば坂の柿紅葉 一広
ひそやかに名残つぐごとつくつくし 一広
黄昏の浜辺にさみしインバネス 一広
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鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com