旅と吟行
俳句を始めて初めて耳にしたのが「吟行」と言う言葉であった。当初銀行と勘違いして笑われた。
芭蕉も一茶も旅をする中で句を磨いていった。時代は進み新しい俳句の再生に生涯を捧げた正岡子規も、不自由な体をおして旅を試みている。
そして旅する中で「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」を残した。
近年、旅吟は報告型に陥る短所があると言われる。そう、先人達の修行の旅は「歩く」ところに意味があるのだろう。そこに乗り物に頼る今日の旅と
歩きながら作句する「吟行」の違いがあるものと思う。
日本の旅には「歩く」がついて回る利点がある。足でかせぐ刑事の様に時には立ち止まり世の物をじっと見つめて作句せねばならない。
夏空へ雲のらくがき奔放に 富安風生
3月の作品抄ですー
*
*
*
雛祭り今年止めたと妻無口 清裕
旅支度列島山河水温む 清裕
おちこちに白梅出づる町に住む 清裕
葉を滑る残雪一片手のひらに 千恵
桃の日や想ひは遥か母のもと 千恵
腰下ろし列車はまだか山桜 千恵
雛飾る遥かに娘想ひつつ 美幸
想ひ馳す故郷からの梅便り 美幸
目借時風やんはりと猫と父母 美幸
去りし人偲ぶ香りや黄水仙 淳子
荒びし庭緑色濃く蓬萌ゆ 淳子
雛の灯や幼き頃を呼び起こし 淳子
春泥や黙々歩む草千里 敬子
板わかめ炙る香りが馳走かな 敬子
リビングに折り紙の雛借り暮らし 敬子
放課後のスキップラララ雛あられ かずみ
全力で歌う園児やチューリップ かずみ
ドーナツの穴の不思議や長閑なる かずみ
春休みケーキ焼く子の傍に母 イサ子
軒下でバイクと暫し春時雨 イサ子
家中で飾る楽しさ雛遊び イサ子
仄明かり母より受けし雛飾 美和子
花便り薄手のシャツの衣紋掛 美和子
助手席の役目はどこへ目借時 美和子
男手の酢飯を扇ぐ雛祭 モトコ
菜種梅雨調子外れの数へ歌 モトコ
塗り立てのジャングルジムや地虫出づ モトコ
招かれて雛に供へし花一輪 桜子
強東風にダンスするやう若檜 桜子
介護士の爽やかなりし春うらら 桜子
枯れかかる心に優し雛ちらし 百々代
初蝶来納骨の日の墓に 百々代
草を食む牛は走りて山笑ふ 百々代
地下に住む者皆思うて春田打つ 一広
賑はひもどこかゆかしき梅見茶屋 一広
故郷の風ゆるゆると吊るし雛 一広
*
*
*
☆ お仲間募集: 俳句に興味のある方、俳句は初めての方も歓迎です。下記迄ご連絡下さい。
鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com