もう6月、俳句をやっていると旧暦と新暦の違いが気になりますが、暦をみるのは楽しく思わぬ過去を知ることが出来ます。さて、今月の勉強会では蛍を詠んだものがあります。そこで今月は蛍の話;
明治16年(1883年)フランス人チャンプレン氏が素晴らしい宇治川の蛍に感激し日本の蛍をフランスへ輸出しています。フランスの水には合わずその後の話はありませんが、「こっちの水は甘いぞ!」とはいかなかった様です。
宇治川では蛍合戦なるものがあり、時には数十万匹の合戦で多くの蛍が戦いで死に流れて行ったとの歴史が残っています。どうも戦うのは雄蛍のみで、少ない雌を奪う為の戦いだったようです。
芭蕉門下の十哲、許六の句―かしこさに合戦なしに飛ぶ蛍 ― 許六。
ずっと時代が下がり文政年間の句―和睦せよ石山蛍宇治蛍 一 一茶。
流れ去る蛍への哀惜一茶の気持ちがにじみ出ています。いつの世もどの世界も平和とは美しいものです。
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6月の作品抄ですー
風青し赤信号に目を凝らし 清裕
父の日や何も要らぬとただ笑顔 清裕
梅雨の入り賽銭箱は本堂へ 清裕
紫陽花や雨粒残す夜明けかな 千恵
小さき手を止めぬ湖畔の水遊び 千恵
雨上がり木漏れ日眩し青葉かな 千恵
待ちゐたる赤き月見る涼夜かな 美幸
紫も明日は朱色か七変化 美幸
たをやかな顔も揃うて咲く四葩 美幸
雨上がり水面擦れ擦れ夏燕 淳子
今日の色決めかねてゐる七変化 淳子
月下美人愛しき一夜を香にのせて 淳子
心付けはずむ引越し梅雨晴間 敬子
一日の勤めのご褒美氷菓子 敬子
記念日の写真は四葩と二人づれ 敬子
ボサノバが流るるカフェ夏の月 かずみ
蛍火の中にティンカーベル探す かずみ
夏燕雛追うてをり守りをり かずみ
こんな世も父の日なれば遠出せり イサ子
大樹なら頼りと絡む蔦若葉 イサ子
新しき水着見せたき磯歩き イサ子
産土を捨て紫陽花の艶やかに 美和子
芝原を覆うて白き雹の玉 美和子
青紫蘇を摘んで匂ひのいつまでも 美和子
古びたる螺旋階段梅雨湿り モトコ
炊き上がる玄米飯 や胡瓜揉む モトコ
蛍狩一番星を探す子ら モトコ
筋向ひ紫陽花満ちる中学校 桜子
母の日の花展の記憶新ページ 桜子
頼るワクチン放課後に流す汗 桜子
梅雨雲やたちまち山を包みをり 百々代
紫陽花のまるで手品師色変幻 百々代
逝きし子の蛍となりて気のままに 百々代
ごとごとと登山電車や紫陽花路 澄江
蛍狩り幼き頃の竹箒 澄江
青葉風クレーンさつと立ち上がり 澄江
百の国巡りて百の夏の夢 一広
存らへばこの地に染まり濃紫陽花 一広
聞きをりし父の生き様知る男滝 一広
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鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com