自然とはものの集まりでも名詞でもなく、“生き物同士が支え合う仕組み”であると京都は大文字山近くにある法然院の貫主が説かれていた。
「自然が豊か」とは色々な生き物にとり生きられる環境が整いそれがバランスよく働いている状態を指すのだそうだ。
この法然院はその昔、水のこんこんと湧く場所に建てられた。周りには深く広大な森が広がり、そこでは無数の生き物が暮らしているという。
寺は様々な学びの場として開放され、子ども達向けには春夏秋冬の樹々の観察や森の変化を体験する環境学習活動も行われている。この活動の中で興味深かったのは森を時間軸で捉えるという発想だ。確かに湧き水も森に育まれ何年も経て湧き出ている。
森の生き物も樹木もシンプルに毎年同じことを繰り返して命を繋いでいることに気づかされる。
緑が豊かになるこの季節、樹木の香気を浴びるだけでなく自然の成す悠久の時に身を置いてみたいものだ - 田中敬子
万緑の仕上げの雨の五六粒 岡本眸
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6月の作品抄です
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古傷の疼きに知るや梅雨の入り 清裕
巣ごもりの日々に重なる梅雨籠り 清裕
白鷺は干潟に立つや揺らぎなし 清裕
単衣着てくぐる鳥居の懐かしき 千恵
紫陽花や聖母に深くかうべ垂れ 千恵
のんびりと馬の群れゐる草千里 千恵
夏河原祖父母に似てか道祖神 美幸
青楓見上げる先の水の音 美幸
紫陽花や空の青よりなほ青く 美幸
灯明の灯の点きぬきし梅雨湿り 淳子
夕立を待ちてひとまず置くホース 淳子
逆さ虹奇なる姿も美しき 淳子
片付かぬ農家の土間や露涼し 敬子
休出は天気頼みの田植時 敬子
父の日や介護はリモート総家族 敬子
五月晴うまく書けない芳名帳 かずみ
遠雷や祈りを止めぬ修道女 かずみ
バリ島を丸ごと洗ふ白雨かな かずみ
湧き水に口近づける薄暑かな 美和子
サングラス外し故郷の海の色 美和子
熱海の夜フライは鯵や地場の味 美和子
紫陽花の大輪の群れ子らの声 桜子
山吹の庭に影差す茶友達 桜子
梅雨寒や夫の自慢お味噌汁 桜子
雨過ぎの水面を揺らす茅花流し 澄江
大木の葉は遊び場か青嵐 澄江
荘厳なしぶきをまとひ那智の滝 澄江
風薫る空にたなびく雲一つ 祐子
紅蓮の小さき花弁の晴れ晴れし 祐子
茶をすする音の静けさ初袷 祐子
故郷へ駅あと二つ河鹿笛 一広
今年また君の手を引く蛍の夜 一広
み仏のうてなを避けて蓮見舟 一広
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鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com