早くも5月、新緑の季節の訪れです。私の住むメキシコ北部では、センソントレという鳥が、朝夕に美しい囀りを聞かせてくれるようになりました。木のてっぺんに止まって鳴く習性があるので、その声は高らかに澄んで響き渡ります。
“ センソントレ”の名前は、スペイン征服前の先住民のナウアトル語に由来しており、「400種類の声を持つ鳥」として、先スペイン時代の文化では重要な位置づけを持ち、多くの伝説に登場しています。他の鳥の鳴き声の真似もできるので、それぞれに囀りの組み合わせのバリエーションが違ってくるのも楽しいです。
その囀りを聴いていると、日本三鳴鳥である大瑠璃の声にも似た響きもあり、遠く故郷に思いを馳せます。センソントレは、私の中で日本とメキシコの橋渡しをしてくれているような感覚を覚えます。
今日もまた、夕方に散歩しながら、鳴き声にその姿を探そうと思います。 千恵
瑠璃鳴くやなほ林中の夕明かり 戸川稲村
5月の作品抄です
幼子の腰の引けたる庭花火 清裕
解体の本堂抜ける若葉風 清裕
薫風やブルーシートの屋根哀し 清裕
聖母月平和よ早くと手を合はす 千恵
微睡ていつしか滝の子守唄 千恵
美しく鳴く大瑠璃よ影いづこ 千恵
異土の子に絵でも喜ぶ初幟 美幸
子の写真見飽きぬ父に首夏の風 美幸
卯の花腐し今日の行き先決めあぐね 美幸
命あるもの賑はひて初夏の朝 淳子
白みゆく空讃ふるや夏の鳥 淳子
打水に匂ひ立ちたる石畳 淳子
薄暑かな酢の香ほのかに炊飯器 敬子
おさな手の優しく包む雨蛙 敬子
初夏やシアーソックス新調す 敬子
白靴のまたバンカーと天仰ぐ かずみ
緑陰に体育座りとあぐらの子 かずみ
愛艇の覆ひを外す梅雨晴間 かずみ
初夏の風犬同伴のテラス席 美和子
潦波紋はアートぞ水馬 美和子
夏場所や夢の優勝除幕式 美和子
今か今かと花火を待てり握り飯 桜子
夏帽子引き出しのなか出番待つ 桜子
123歩幅大きく初夏の空 桜子
紫陽花や部屋に花壇を見る心地 澄江
旅先の子へのサービス揚げ花火 澄江
旅果てぬ蒲公英の絮我もまた 澄江
大空に光る白シャツ子の帰宅 祐子
いつの間に子の背な広し草むしり 祐子
高千穂の滝に泣く子の古写真 祐子
後戻り出来ぬ人生走馬灯 一広
小次郎も切れるものかよ夏燕 一広
静けさや闇夜の戦蛍の火 一広
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鈴木一広(Kazuhiro Suzuki)Email:ka.yariho3182@gmail.com