母は桜が大好きでした。北陸では染井吉野がやっと開く季節の生まれでした。
6年も前の事ですが、故郷金沢の犀川のほとりで母の誕生日を祝いました。咲き誇る枝垂桜の下、頬をチップとデールの様に膨らませて幼児の様にローソクを吹いていた母、その笑顔が今も思い出されます。
季語の「枝垂桜」は細い枝が幾筋も垂れさがり花をつける姿に一名、糸桜とも呼ばれています。その可憐さを一体どのような感性の方が最初に表現したのでしょう。
歳時記で見つける日本語の美しさ、奥深さにいつも感動致します。
さて、みなさんはどんな思いを桜と共有していらっしゃいますか? 淳子
さまざまの事思い出す桜かな 松尾芭蕉
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3月の作品抄です
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粒あんと思い定めし草の餅 清裕
植木市通路をふさぐ苗の束 清裕
春一番どこふく風とシニアカー 清裕
読みかけの書を開きたき春の夜 千恵
葱坊主どちら向いても丸坊主 千恵
蓬餅思ひは母との蓬摘み 千恵
人去りし庭にちらめく忘れ雪 美幸
母ぽつりきつと今頃梅見頃 美幸
夫と行く旅の途中の植木市 美幸
苗床に傾く双葉陽をさがし 淳子
苗木市色の多さにとまどひぬ 淳子
愛猫の魂のごと蝶の舞ふ 淳子
春浅しせせらぎなづる風硬し 敬子
とねつこが先づ飛び出して牧開き 敬子
草餅を半分つこする二人の夜 敬子
春めきて乙女心に静電気 かずみ
弟とうとうとしつつ春炬燵 かずみ
普段着の神主も来て植木市 かずみ
植木市小さき鉢に山野草 美和子
枝陰にこそりと入るや鳥の恋 美和子
ボクサーの古希に抗ふ春嵐 美和子
植木市名に惹かれけりプリンセスダイアナ 桜子
強東風や病む身ひとりの佇まひ 桜子
寄り道で見つけし蓬の蓬餅 澄江
早々と園児飛び出す春の空 澄江
うりずんやリハビリ後の顔ゆるみ 澄江
雛あられだけで明るい夜となりぬ 祐子
草餅が今宵の主役絶ゆぬ笑み 祐子
愛犬の食細くなる春の闇 祐子
せせらぎや人声交へ春の川 一広
手に嬉し今朝のぬくしや唐津焼 一広
子の未来思ひながらの植木市 一広